冒頭述べたとおり、キャンプの成否を握るペグの基礎知識として、まずは、ペグの種類を紹介する。
ステンレスやアルミニウム、中にはチタン製のものもあるが基本は一本の金属棒を曲げたものである。 ネイルペグと区別を付けない場合もあるが、本サイトでは、金属棒を曲げただけのシンプルなL字型の釘や丸型ヒートン(アイボルト、Eye Bolt)形状のものをピンペグと呼ぶ。
スノーピーク(snow peak) ジュラルミンペグ
安い。 軽量。 コンパクトに収納が可能。
曲がる。安価なものは簡単に曲がる。
ピンペグの最もよく使われる場面は、地面が比較的柔らかい場所である。とくに芝生など、ピン型のものが刺さりやすいが、ある程度ペグが食いつく場所に限られる。ピンペグは風などの強い日には向いていない。間違っても砂浜ではオススメしない。砂に落とすと簡単に埋もれてしまい探すのが大変である。また、ビーチなどで抜き忘れて帰宅すると誰かに怪我をさせてしまうことがある。ピンペグだけは砂浜で使ってほしくない。
テントやタープの付属品などについてくるため持っている人は多い。しかし使える場面(場所)はとても限られている。最低でもより強力なペグをワンセット早めに購入しておくべきである。これだけは間違いない。ピンペグはグランドシートやレジャーシートの固定にも重宝する。新しいペグを購入しても持っておいて損は無い。
安い。 軽い。 砂地、湿った地面でも固定力がある。
よく折れる。 砂利や固い地面に弱い。
プラスチックもしくはABS樹脂でできたペグを指す。
一般的には断面がT字型で土や砂との接触面が増えるため、摩擦が増えて抜けにくくなる。(付着強度が高い。)価格もとても安価である。タープやテントの付属品のイメージが強いが、砂地では最も効果的なペグのひとつである。サンドペグの代替品として十分な固定力があり、砂地ではピンペグや高価な鍛造ペグよりも役に立つ。また、泥など少し滑りやすい地面や崩れやすい地面でもプラペグが無難な選択である。
プラスチックペグの弱点は応力に弱いことである。石ころやジャリのサイトでは簡単に折れてしまう点には注意が必要である。プラスチックペグが曲がるような砂利まじりのサイトなどでは鍛造ペグやYペグを使用するべきである。
テントなどを購入した場合は20cm前後のものが付属していることが多いが、20cm、30cm、40cmぐらいのものが市販されている。20cmはあまりに貧弱なので、早目に30cm以上のものに交換して、付属品のペグは予備に取っておけばよい。プラスチックペグをメインにしている場合は、予備を常に数本持っておくべきである。砂地や強風下でX字型にペグを打って補強することもできる。ペグをX字型に打ちこみ、ここにガイロープなどを引っ掛けることでペグ一本よりも強力な張力を得ることができる。 テントやタープの最低必要本数に対して、半分程度の予備を持っておいても損はしない。余っても使い道はあるので、まとめ買いをしておこう。
プラスチックペグはプラスチックハンマーを使うべきである。硬いものと柔らかいものをぶつけるとやはり柔らかいものが負けてしまう。重たいスチール製のハンマーでプラスチックペグを打つとペグヘッドが壊れたり、ペグ自体が曲がったりしてすぐに破損してしまう。
軽量。 収納がコンパクト。 固い地面でも比較的容易に挿さる。
汚れやすく土が溝にたまりやすい。 打ち込む時に折れやすい。
断面がV字型(またはカッコ型)のものをVペグと呼ぶ Yペグに比べて、安価なものが多く、重ねてコンパクトに収納しやすいため、登山、縦走で愛用する人が多い。
ジュラルミン製やチタン製が主流となっている。
Yペグに比べて曲がりに弱い。ハンマーで打ち込む時にペグの向きに対して斜めに打ち込むと簡単に曲がってしまうので注意が必要でる。ハンマーの力を加減するためにはハンマーの柄を短く持つというのが有効である。
使用後に土が残りやすいので、水洗いなどが必要となる。
軽量。 固い地面でも比較的容易に挿さる。 Vペグより折れにくい。
Vペグに比べて収納容量が大きい。 汚れやすく土が溝にたまりやすい。 打ち込む時に折れやすい。
断面がY字型をしているので、一般的にYペグと呼ばれる。
ジュラルミン製のものが主流である。ジュラルミンはアルミニウムの 一種であり、ジュラルミンにも幾つか種類があり、その中でも最高強度の素材としてA7075というジュラルミンがある。A7075製のペグが良いがそれ以外のものも存在するので購入時に注意が必要である。
DOPPELGANGER(ドッペルギャンガー)のレインボージュラルミンペグ、 THE NORTH FACE(ザノースフェイス)のジェイステイクはA7075との記載がある。またMountain Safety Research(マウンテン セーフティ リサーチ MSR)のグランドホグ ステイクなどもAmazon上で7000シリーズとあるので同じ素材ではないかと思われる。
Vペグと同様に軽く、登山や山歩きでは重宝する。 3方向に力が分散されるため、Vペグよりも折れ曲がりにくいが、ガイロープを引っ掛ける部位はペグ全体の中でくびれているために、この部分が折れやすい。ペグハンマーで力を入れて打ち込むよりは力を加減しながら、少しずつ打ち込むのがペグを長持ちさせるポイントとなる。
使用後に土が残りやすいので、水洗いなどが必要となる。
軽量。 固い地面でも比較的容易に挿さる。 Vペグより折れにくい。
Vペグに比べて収納容量が大きい。 汚れやすく土が溝にたまりやすい。
断面がX字型(十字型)のペグである。Yペグとほぼ同様の特徴を持っている。同じくジュラルミンなどでできており軽く丈夫なのが特徴。 Xペグを販売しているメーカーは多くない。アライテントのクロスペグ、HILLEBERG(ヒルバーグ)のXペグなどが有名である。
使用後に土が残りやすいので、水洗いなどが必要となる。
軽量。 固い地面でも比較的容易に挿さる。 抜きやすい。
砂地や湿った地面に弱い。 ガイロープのフック部分が小さいものがある。 ガイロープのフック部分がプラスチックのなどのものはその部分が壊れやすい。
ネイルペグは基本的にはシンプルな一本の棒状のペグである。もちろん先端は打ち込みやすいように尖っていて、ペグヘッド側はカギ状になっていてロープを引っ掛けることができるのが一般的である。コスト重視でシンプルな形状のものが多い。鍛造ペグと同様、ある程度の砂利や固い地面でも摘要可能である。ただ、ペグ本体にプラスチック部品がついているものは、意外とこの部分が破損してしまうことが多いようである。
ステンレス、アルミニウム(ジュラルミン)、チタンなどが存在するが、登山などで、荷物の重量が重要な場合は、アルミニウムやチタンがおすすめである。
固い地面でも容易に挿さる。 折れにくい。
重い。高価。
鍛造ペグとは、鍛造により整形されたスチール製のペグである。スノーピークのソリッドステーク、コールマンのスチールソリッドステーク、エリッゼのエリッゼステークなどがある。いずれも約20cm、30cm、40cmなどいくつかのバリエーションがある。スノーピークではさらに50cmのものもあるが、1本1000円以上ととても高価である。そして、重い。30cmのペグで150~200g、40cmで300g以上もある。ヘキサタープでは、ペグが8本必要だが、40cmペグで揃えると、ペグだけで2.4kg以上となってしまう。登山キャンプには向いていない。 車の利用は必須であるし、どちらかというと家族向きのおおきなテントやタープでの利用に適している。
約20cm、30cm、40cm、50cmなどいくつかのバリエーションがあるが、ヘキサタープのタープポールなど強力なテンションのかかる場所に40cm~50cmの鍛造ペグを利用して、それ以外の場所にネイルペグや30cmぐらいの鍛造ペグを利用するのも選択の一つである。
シンプルな作りのネイルペグに比べてガイロープの固定もしやすい。また、引き抜く時にもペグハンマーのフックを引っ掛けて抜くのにも適するよう、引っ掛ける穴などのついた形をしていることが多い。固い地盤でのペグ打ちでもっとも威力を発揮する。スノーピークのソリッドステークは岩も打ち抜くと言われているが、実際に、ペグ打ち中に明らかに石に当たった感じがしても、数回ハンマーで叩くと貫通したりする。(もちろん貫通できない場合もあるが)それぐらい頑丈なので、かなり固い地面、砂利まじりの土地でも安心してハンマーで叩くことができる。
鍛造ペグが苦手とするのは柔らかい土地である。ぬかるみのような場所、砂地では、簡単に抜けてしまう。鍛造ペグは塗れると滑りやすい、また、プラスチックペグに比べて、表面積が少なく摩擦力が少ないため、引き抜きの力に対しては弱い。ぬかるみのような粘土質の土地、砂浜を除けば、高価ではあるが、大きめのテントやタープの設営時、風避けのない平地のテントサイトでは、揃えて置きたいタイプのペグである。
ちなみに鍛造ペグの中で個人的なオススメはエリッゼステークの28cmと38cmである。過去の経験からペグは草地などでは草に隠れて見えにくいことがあり、引き抜いて回収するまでに紛失することが多い。エリッゼステークの鍛造ペグは黄色や赤、ピンクといった、とても目立つカラーバリエーションがあるためベグ忘れを防いでくれる。また、断面が楕円のためペグが回転せず、テントの張り紐をかける時に安定する形状である。